top of page

自治体経営における市長の役割と在り方について

問(林):

去る5月議会で、我が会派の同僚議員がハラスメントに関して質問した際の市長のご答弁を拝聴いたしました。市長はその時「私自身45年間職員として、市民や保護者、有力者、業者、そして議員の皆様と直接接する多くの機会を頂いてまいりました」と仰っておられました。この「私自身45年間職員として」という言葉には、強い違和感を覚えたことを今でもはっきりと記憶しております。

そこで、質問させていただく前に念のため市のホームページを確認し、市長のプロフィールを再度確認いたしました。市長は昭和55年4月から平成26年10月までの約35年間、本市の職員として市民のために尽力され、その後、退職されたのち、平成27年4月に市長選で信任を受けて市長に就任されたとのことでした。今日までの約9年半、市民のためにトップとしてご尽力いただいていること、本当にお疲れさまでございます。

さて、私たち議員は、市民の皆様から直接信任を受け、選ばれてこの議場にいることを重く受け止めております。一人一人、市民の声を代弁するという重要な役割を担っているのは、言うまでもありません。ご存じの通り、二元代表制のもとでは、市長が提案する予算や条例を私たち議員が精査し、市民の要望を反映させながらお互いに意見を交わし、協力して市政を進めていくのが、理想的な形だと思われます。

もちろん、市長ご自身も、市職員としての責任と市長としての責任がまったく異なることは、十分ご承知かと思います。にもかかわらず、「45年間職員として」というご発言を議場で堂々とされるあたり、現在のご自身の役割を本当に理解されているのか、少しばかり疑問が生じてしまいました。

さらに、先ほども申し上げた通り、私たちはそれぞれ異なる立場――議員と市の最高責任者――として市民のために働いているはずですが、どうやら市長は現在も職員時代と同じような調子で市政を運営されているのでは?と感じざるを得ません。

もし仮に市長がそのような考えで市政を進めておられるのであれば、私を含め、市民を代表する者としては非常に不安を覚えざるを得ないところです。

もちろん、市職員を守ることが市のトップとして重要であることは、誰しも理解しております。しかし、もし市政が市職員の視点にのみ偏って運営されているとすれば、その先に待っているのは、間違いなくリスクです。

私としては単なる言い間違いではないと思っておりますが、ぜひ市長の真意をお聞かせいただきたく存じます。

答(市長):

市長の役割と在り方につきまして、少しばかり疑問が生じたとのことですので、その疑問にお答えをしたいと存じます。

私が自身の行政経験の長さに言及をする場合には、外からはなかなか見えにくい吹田市役所組織の強み、弱み、特質、そしてそこに潜む可能性についての知見を、少しばかり持っているという事実と、一方、それにより、それだけに一層それを生かして責任を果たさなければならないという思いがあります。

裏返しますと、単純に言うと企業経験がないということです。行政経験が長いことの強み、それから企業経験、企業、ほかの経験が社会人経験がないという弱み、これはどっちがどうかは分かりません。結局、それは実現した仕事により、市民から厳しく評価をされることになる、そういう立場だと思っております。

私も市政運営の理念を掲げ、選挙により市民から選ばれた者として、行政の長であるとともに、政治家としての一面を有しております。その上で、組織経営者として、スタッフたる市職員を信頼し、その能力を最大限引き出しつつ、共に仕事をする。そのための改革や労働環境の整備に取り組む、この意識を大切にこれまで市政を運営してまいりました。

市民の負託に応えることができる市政運営を行うためには、広くチームメイトたる職員の信頼を受けていることが大切であることも、これまでの行政経験から学んだことでございます。

意見(林):

市長、独特なご答弁いただき、ありがとうございます。市長ご自身のお考えを聞かせていただき、少しは納得できたかもしれません。しかしながら、どうも私の頭の中では、まだ“45年間職員として”という言葉が引っかかって離れないのです。

職員の視点を大切にされることはもちろん重要ですし、それが市の円滑な運営に寄与していることは否定できません。ただし、私は市長にお願いしたいことが一つございます。それは、今一度、現在のご自身の立場について深く考えていただきたいということです。

市長はトップとして市政を率いておられるわけですから、どうか『職員』の立場から一歩退き、全体を俯瞰するリーダーシップをさらに発揮していただきたいと思います。市長の45年のご経験は、もちろん市政にとっての大きな財産です。しかし、それが“職員としての感覚”にのみとどまるのであれば、市長の役割は果たせないかもしれません。

この場で改めて申し上げたいのは、市長の現在の肩書きは『市職員』ではなく、『市の最高責任者』であるということです。そして、その重責に相応しい判断を常に求められていることを、どうかお忘れにならないでいただきたい。

私たち議員も、市民の声を反映するという責務を持っておりますが、どうも市長の最近のご発言や行動を見ておりますと、職員としての感覚がまだ強く残っているのではないか、と感じざるを得ないのです。

市民のために、さらなる“職員感覚”からの脱却と、本当のリーダーシップを期待しております。市政の進展を願う市民の一人として、今後も見守ってまいります。

また、先日の我が会派の代表質問へのご答弁として市長は現下では物価高騰が落ち着いているというような表現をされておられました。ですが、先月8月8日には人事院より令和6年度の人事院勧告が出されており、今後、本市の職員給与が大幅にアップデートされる見通しなのかな?と思っております。これについては一般職員の給与改定についてのアップデートのすべてを否定するわけではございません。しかし、現下の情勢で働く現役世代の多くの市民が賃金上昇した実感がないと考えます。物価高騰が落ち着いているとのご認識をお持ちの市長が、職員感覚が抜け切れていないせいで、まさか自らの報酬をアップされるおつもりはないかと存じますので私としては動向を注視させて頂きます。

bottom of page